抵抗器の種類に関係なく熱放散を悪くすることは故障が生じる大きな原因です。また昨今、電気機器の
小型化、高密度化、使用環境の高温化が進み、基板全体の熱設計は重要な課題となっています。
下記グラフおよび図は抵抗器の常温における熱放散のイメージです。
リード型抵抗器はリード線(端子)が細く長いため、熱抵抗が高く、放熱の割合は高くありません。
これに対して対流と放射は抵抗本体の面積が大きいため割合が高くなります。
一方、チップ抵抗は表面積が小さいため対流と放射は行われにくく、端子からの伝導の割合が
約9割を占めます。
チップ抵抗器 リード型抵抗器
形状によって放熱特性は異なります。 同じ定格の部品を使用する場合でも形状によって基板耐熱などの
検証を十分に行う必要があります。
用語補足
■ 端子からの伝導 ■ 対流 ■ 放射 |
チップ抵抗器6332mm リード型抵抗器 基板から6mm浮かし
周囲温度:25℃ 負荷率1W
同じ定格電力の部品でも端子から基板・パターンへの熱伝導割合が大きいチップ抵抗器はリード型抵抗器
に比べ部品本体と基板温度(端子付近)の温度差が少ないことが分かります。
リード型抵抗器からチップ抵抗器に設計変更する際は、基板耐熱性などの検証が必要です。
【参考データ】 物質の熱伝導率
物質 | 熱伝導率 [W/m・K] | 備考 |
銅 | 377 | 基板パターン、抵抗器リード線など |
アルミニウム | 206 | |
鉄 | 67 | |
はんだ(Sn-Ag-Cu系) | 60 | 部品接合材料 |
空気 | 0.024 | |
紙フェノール(FR-2) | 0.13-0.25 | 基板材料 |
ガラエポ(FR-4) | 0.25-0.45 | 基板材料 |
熱伝導率の高い基板パターン(銅)に効率よく熱を伝導させることで部品温度が下がります。
※その代わり基板温度は上がりますので注意が必要です。
抵抗器には一般的に周囲温度によって印加できる負荷率を制限する考え方があり、その条件は
負荷軽減曲線という図で規定されています。
これは、発熱部品である抵抗器の温度が、周囲温度+負荷率に応じた温度上昇(ΔT度)
になることから、部品の限界温度を超えないようにするための仕様です。
負荷軽減曲線(例)
抵抗器使用の際、電力、温度に十分なマージンをとっていれば問題は発生しません。
しかしながら昨今、電子機器の小型化、部品の高密度実装化が進んでいる状況においては
周囲温度や抵抗への負荷率が同じでも部品間の温度干渉などによりマージンが少なくなっている
こともありますので、小型化・高密度実装設計の際は、より多くの電力的マージンを取るなどの
設計配慮をする必要があります。
抵抗器を使用して回路設計を行う際の安全対策事例を下記に示します。
・【部品温度抑制】 抵抗器が実装されるランドパターンを大きくする。
・【部品温度抑制】 ランドに接続されているパターンの幅を広くする、厚くする。
・【部品温度抑制】 実際の電力よりも大きめの部品を使う。
・【部品温度抑制】 放熱対策された部品を使う。 →(例)高電力角型厚膜チップ抵抗器CPRシリーズ
・【基板耐熱対策】 チップ抵抗器はリード型抵抗器よりも基板への熱伝導が多いことに留意する。
また、弊社では製品ごとに部品の温度上昇データを揃えております。
設計の参考に役立つデータですので、お気軽にお問合せ下さい。
部品表面温度上昇(ΔT)データ例 (耐サージ抵抗ASR/ASRMシリーズ)
参考文献
2024年までの電子部品技術ロードマップ/JEITA
電子機器用固定抵抗器の使用上の注意事項ガイドライン/JEITA