コラム

回路設計、動作に影響する抵抗器のパラメータ

■試作したら動作がおかしい・・・抵抗器の特性を見直してみませんか?

「回路設計をして試作したら予定の動作をしない、計算通りの電圧・電流値にならない。」

そんな場合は、各部品を見直さなければなりません。

抵抗器はどうだろう・・・? 抵抗値は計算通りだから問題なし!  と判断する前に
もう一度確認してみてください。

もしかしたら抵抗値以外のパラメータが影響しているかもしれません。

ここでは抵抗器において、回路動作に影響するパラメータを3つ紹介、解説します。

 

■抵抗温度係数(TCR)

意味としては「抵抗器の温度変化に対して抵抗値がどの程度変化するか」で、
温度差1℃あたりの抵抗値変化を百万分率(ppm)で表しています。単位はppm/℃です。

抵抗器のカタログにも出てくるパラメータなのでご存知の方も多いと思います。
英語のTemperature Coefficient of Resistanceの頭文字から”TCR”と呼ぶことが多いです。 

抵抗値の許容差や変化率は%で表すことが多いのでppmだとイメージが湧きにくいですが、
10000ppm=1%、1000ppm=0.1%、100ppm=0.01%のいずれかを覚えておくと
計算しやすいでしょう。

一般的な抵抗器のレンジは10ppm/℃~1000ppm/℃です。
(1~5ppm/℃のような高精度品も存在します。)

下記の図1は25℃を基準としたときに±100ppm/℃の製品がとりうる抵抗値変化範囲を
示したものです。
TCR値が正(+)か負(-)かにより温度変化に対する変化が増加か低下か異なります。
また、TCR値はLOT差、個体差があります。


図1 ±100ppm/℃の抵抗値変化範囲

当然ながらTCRは小さい方が部品特性として安定で、信頼性の高い回路設計もできます。
一つの製品シリーズ内で複数のTCRのグレードをラインナップしているものもありますが、
基本的に狭TCRになるほどコストも高いので、バランスを見て選定することをお勧めします。

 

■電圧係数(VCR)

意味としては「抵抗器に印加する電圧に対して抵抗値がどの程度変化するか」で、
電圧差1Vあたりの抵抗値変化を百分率(%)や百万分率(ppm)で表しています。
単位は%/Vやppm/Vです。

英語のVoltage Coefficient of Resistanceの頭文字をとって”VCR”と呼ぶこともあります。

一般の回路/抵抗器では影響は小さいのでカタログやデータシートに記載されることは
少ないですが、高電圧回路設計や高電圧タイプの抵抗器を使用する場合は覚えておきたい
パラメータです。

ここで疑問に思われた方もいるかもしれません。
オームの法則(E=R*I)において抵抗Rは電圧と電流の比例定数なのだから電圧によって
抵抗値が変わってしまうのはおかしいのではないか?

その通りです。

回路設計において抵抗Rは一定の前提で電流・電圧計算、部品選定をしますので
電圧によって抵抗が変わってしまっては狙い通りの動作にならないなどの不具合が
起きる可能性があります。

実際の抵抗器においてVCRは非常に小さく、一般回路で影響が出る事例はほとんど
ありませんが、現実として印加電圧による抵抗値変化が起きているのです。

下記計算および図2は代表的なVCR値とシミュレーション結果です。

【例】
 VCR=-0.0005%/V、印加電圧=100Vの場合、抵抗値変化=0.0005%/V*100V=-0.05%
 つまりこの場合、無負荷状態で100kΩであっても、100V印加下では99.95kΩとして機能
 しています。

       図2 電圧係数による抵抗値変化シミュレーション

※ここでの抵抗値変化とは電圧が印加されている間だけの現象であって、恒久的に
 抵抗値が変わってしまうわけではありません。

VCR値が正(+)か負(-)かにより電圧に対する変化が増加か低下か異なります。
上のグラフは負(-)の例です。

上のグラフのように印加電圧が高いほど抵抗値変化率が大きくなりますので、
電圧係数の影響は定格電圧の高い高抵抗値や高電圧タイプ抵抗器ほど大きくなります。

弊社では抵抗値レンジや製品群に合わせて0.01V~200V相当の条件で測定しています。
なお、抵抗値に疑義があった場合はJIS C5201-1 4.5項に従い測定します。

 

■周波数特性

抵抗器の回路記号はRです。
理想的な抵抗器はこの通り抵抗成分のみを持つ状態ですが、実際には抵抗以外の
寄生成分を持ちます。両端電極やトリミング溝を挟んだ抵抗体がキャパシタンス、
リード線、らせん状の抵抗体や巻線はインダクタンスとなり、簡易的な等価回路図は
図3のようになります。

     図3 抵抗器の簡易等価回路

touka

高周波回路や高周波成分を含む電流・電圧波形においてインピーダンスは
公称抵抗値からズレることもあるため、回路動作に影響を及ぼす場合があります。
図4は抵抗器の周波数特性です。特に1MΩ以上ではスイッチング電源などでも
スイッチング周波数として利用される100kHz手前からインピーダンスが変化し始める
こともあります。回路の高周波化が進むトレンドにおいて無視できないポイントに
なっていくのではないでしょうか。

        図4 1/4Wリード線形抵抗器の周波数特性(シミュレーション)

impe

 

  • 取扱商社一覧
  • カタログ請求
  • お問合せ