V=√(P×R) 「ブイイコールルートピーアール」
という式を聞いたことがありませんか?
抵抗器には個々の製品で超えてはいけない定格電圧があり、
これを計算するための式がV=√(P×R)です。
定格電圧は、なぜ・どのように決まっているのか?これを超えたら
どうなるのかを少し詳しく解説します。
同じ受動部品であるコンデンサの場合、定格電圧はわかりやすく、50VのXXXシリーズ
といえば、どの容量の製品であっても50Vまで使用することができます。
一方、抵抗の場合、例えば定格電力が1/6W(0.166W)の同一シリーズでも、
印加することのできる電圧は、抵抗値によって異なり、
V=√(P×R) で計算されます。
(ここで、V:定格電圧[V]、P:定格電力[W]、R:公称抵抗値[Ω] です。)
例として、定格電力1/6W製品の抵抗値毎の計算値をグラフにすると次のようになります。
グラフ1 1/6W 抵抗値別 V=√(P×R)計算結果
実際の製品仕様は、定格電圧に上限(下の例は200V)が設定されることが多く、
下のようなグラフになります。
![]() |
※この時の定格電圧の上限値は「最高使用電圧」としてカタログなどで規定されています。
→コラム「抵抗器カタログの読み方」
ここで疑問が出てきます。
なぜ定格電圧はV=√(P×R)なのか?
なぜ上限値の設定があるのか?
これを超えたらどうなるのか?
これらを下記で解説していきます。
「ブイイコールルートピーアール」はどのようにして導かれるのでしょうか?
まず、一般的な電力の話をします。
電力の計算式はいろいろありますが、最も一般的なものは
電力=電圧×電流 です。 これを式にすると
P=V×I [W] ・・・式1 電力計算
となります。
次に、オームの法則です。抵抗Rに電圧Vを接続したときの電流Iとの関係は、
V=I×R ・・・式2 オームの法則
です。これは抵抗器の動作原理そのものです。
式2を変形しI=V/Rとして式1のIに代入すると、
P=V2/R [W] ・・・式3 電力計算
となります。 これは抵抗器で消費する電力を表しています。
これを変形してVの式にすると「ブイイコールピーアール」を得ます。
P=V2/R
↓
V2=P×R
↓
V=√(P×R) [V] 抵抗器の定格電圧計算
意外と簡単ですね。
Pには抵抗器の定格電力、Rには公称抵抗値が入ります。
因みに、式2をそのまま式1のVに代入すると
P=I2R [W] ・・・式4 電力計算
となり、これも抵抗器で消費する電力を示しています。
そして、この式からは抵抗器の”定格電流”を求める次式が得られます。
I=√(P/R) [A] ・・・式5 抵抗器の定格電流計算
ここまでのまとめ ■電力を計算する式はいろいろある。 P=V×I ・・・式1 ■抵抗の定格電圧計算式はV=√(P×R) で、式3から導くことができる。 |
例えば、グラフ1に示す計算結果通りの電圧を抵抗器に印加した場合、
どの抵抗値をとっても必ず消費電力が0.166W(1/6W)になります。
そもそもP=0.166Wとして計算した結果なので当然といえば当然です。
定格電力は超えていないのに、なぜ定格電圧に上限値を設定するのでしょうか?
結論は「電力は一定で問題なくても耐圧には限界があるため」です。
V=√(P×R) の式においては抵抗値が高くなるほど電圧も高くなります。
基本的に抵抗器は同一シリーズ内であれば抵抗値によらず本体寸法は同じなので
電圧が高くなって行けば最終的に抵抗器内部や両端電極間の絶縁が破壊し
故障が発生します。そのため定格電圧には上限値が設定され、品質を確保しています。
定格電圧を超えると、式3からもわかる通り電力Pが抵抗器の定格過電力を超え
(過負荷状態)次のような不具合現象が起きます。
過負荷状態 | 症状・故障モードなど |
定格電圧の3倍以下 | 若干抵抗値変化し、発煙や基板が焦げる |
〃 3倍~5倍 | 抵抗値が大きく変化し、発煙、発火に至るケースもあり |
〃 5倍~10倍 | 多くは数秒~数分で発煙、赤熱、発火する。断線に至るケースもあり |
〃 10倍以上 | 瞬時の断線、絶縁破壊によるスパーク・火花、発煙・発火など |
発煙、発火などが起きるのはジュール熱(熱エネルギー)によるもので、
発熱と放熱のバランスが崩れ、抵抗器の温度が上がるためです。
抵抗R[Ω]の両端に電圧V[V]をかけ電流I[A]をt[s]流した時の熱エネルギーQは
ジュールの法則により
Q = IVt = V2/Rt = I2Rt [J] となります。
この式のIV、 I2R、 V2/Rに見覚えはありませんか? 式1、3、4の電力そのものです。
つまり、ジュール熱は電力と時間の積 P×t ということです。
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