ヒューズ抵抗器について
電子機器の小型・高機能・高性能化に伴い、電子回路の安全性を確保する回路保護部品の重要性が高まっています。
抵抗器においても、通常は抵抗器として機能しますが、異常時にはヒューズが働き、回路電流を遮断するという機能を持った“ヒューズ機能付抵抗器”があります。
本コラムでは、ヒューズ機能付抵抗器のうち特に“ヒューズ抵抗器”について、溶断メカニズム、使用上の注意事項、使用例について解説いたします。
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Ⅰ.ヒューズ抵抗器とは
1.分類
ヒューズ機能付抵抗器には、JISで規定されている抵抗素子の溶断を利用した“ヒューズ抵抗器”と、温度ヒューズと抵抗器を一体化した”温度ヒューズ内蔵抵抗器“があります。
弊社では、ヒューズ抵抗器と、温度ヒューズ内蔵抵抗器それぞれに対応した製品をラインアップしています。
図1.ヒューズ抵抗器の分類
*ヒューズ抵抗器はこちら https://www.akaneohm.com/prd_cat_use/fuse/
2.JISの規定
JISにおいては、ヒューズ抵抗器の意味について以下の様に規定しています。
JIS C 5602-1986 2211 ヒューズ抵抗器
通常は,抵抗器として動き,規定以上の過電流が流れたとき,規定時間内に抵抗素子
が溶断して,電流の流れを阻止し,抵抗値が元に復帰しない機能をもった抵抗器。
(fusing resistor )
3.ヒューズ機能付抵抗器の概要
ヒューズ抵抗器および温度ヒューズ内蔵抵抗器の概要について説明します。
1)ヒューズ抵抗器
ヒューズ抵抗器は、碍子に形成された抵抗体の溶断現象を利用し、ヒューズとして働きます。抵抗体が高温となるため、外装は難燃性塗料を使用します。
通常は抵抗器として機能し、回路の異常時に、安全に溶断してほしい箇所に使用しますが、溶断にある程度時間を要し一般にヒューズより反応が遅くなりますので、採用に際しては、この点を考慮する必要があります。
図2.ヒューズ抵抗器の構造
2)温度ヒューズ内蔵抵抗器
温度ヒューズ内蔵抵抗器は、温度ヒューズを抵抗体と一緒に組み込んで一体化した構造となっています。安全規格UL1419認証取得品もございますので、電源の突入電流防止用抵抗器にご使用ただけます。
図3.温度ヒューズ内蔵抵抗器の構造
Ⅱ.ヒューズ抵抗器の規格
この項では、JISにおけるヒューズ抵抗器の用語の意味から、ヒューズ機能としての規格、抵抗機能としての規格を解説いたします。
1.ヒューズ機能としての特性
前項のヒューズ抵抗器の定義に照らし合わせて、ヒューズ抵抗器の規格を見てみましょう。
ヒューズ抵抗器とは
元々抵抗器ですので、抵抗器としての性能を満足するようシリーズ毎規格化しています。
図4.抵抗器
シリーズの毎に、電力と溶断時間を規定しています。
ヒューズ抵抗器FRNシリーズの場合は下図のようになります。
図5.溶断特性
過負荷が印加されると抵抗体が発熱して、最終的に抵抗皮膜が融点に達した時点で溶断に至ります。
溶断とは公称抵抗値に対して100倍以上になった状態としています。
図6.ヒューズ抵抗器の溶断
となります。
2.抵抗器としての特性
前項の様に、ヒューズ抵抗器は通常の抵抗器にヒューズ機能を持たせるため、抵抗器としての性能うち、特に最高使用電圧・最高過負荷電圧・パルス耐性が低下します。
以下に、標準的な金属皮膜抵抗器RNシリーズと、ヒューズ抵抗器FRNシリーズの特性比較を示します。
図7.抵抗器とヒューズ抵抗器の特性比較
図8.パルス限界電力曲線
ご検討に際しては、各シリーズの特性をよくご確認の上ご使用ください。
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Ⅲ.ヒューズ抵抗器の溶断特性および溶断メカニズム
ここではヒューズ抵抗器FRNシリーズを例にとり、溶断特性および溶断メカニズムについて説明します。
1.構造
弊社ヒューズ抵抗器の構造は一般的なリード付抵抗器と同じです。
ただし下記構造、4抵抗体にヒューズ専用の材料を使用し、次に示す溶断メカニズムが促進しやすい仕様となっています。
図9.ヒューズ抵抗器の構造
2.溶断メカニズム
ヒューズ抵抗の溶断過程は以下の通りです。(定電圧回路の場合)
① 過負荷印加→ジュール熱により抵抗値が低い方へ変化(※)する。
② 抵抗値が低くなるので電力P=V2/Rより消費電力Pが増加し発熱量が増える。
③ 発熱量が増えると①の現象がさらに進み、②により発熱量が更に増えるという過程を経て、最終的に抵抗皮膜が融点に達した時点で溶断に至る。
※抵抗値が低下するのは抵抗体の結晶構造の変化により導電率が上がるため。
3.抵抗値変化に関する注意事項
ヒューズ抵抗は溶断の過程で抵抗値が一旦下がり、そこから断線に至ります。最大で初期値の-80%まで下がる場合がありますので、回路条件によっては電流容量不足(定電流回路)で溶断せずに抵抗値が低下または増加した状態で保持され溶断に至らない場合があります。ご使用の際は実機にて十分検証いただきますようお願い致します。
図10.ヒューズ抵抗器溶断特性
Ⅳ.ヒューズ機能付抵抗器の使用上の注意事項
以下に、ヒューズ機能付抵抗器の使用上の注意事項を示します。
1.ヒューズ抵抗器は通常の抵抗器にヒューズ機能を持たせるため、抵抗器としての性能と、ヒューズとしての溶断特性をよくご確認の上選定ください。
2.ヒューズ抵抗器には過電力時に抵抗が増大するタイプと、抵抗が減少するタイプがあります。使用回路のインピーダンスを考慮して品種を選択してください。
また、 ご使用の際は実機にて十分検証いただきますようお願い致します。
3.樹脂コーティング、ポッティングおよびモールド封止を行うと、溶断特性が変化することがありますので、ご注意ください。
4.ヒューズ内蔵抵抗器は、はんだ付け条件によっては、温度ヒューズが作動することがありますので、はんだ付け条件の確認を行ってください。
Ⅴ.ヒューズ機能付抵抗器の使用例
1.LED電流制限抵抗
LED回路においては、LEDと直列に抵抗器を接続し、電流を定格以下に抑制します。
図11.LED回路
このような回路においてLEDの故障等で短絡モードになった場合、供給電圧と抵抗値によっては、メインの保護回路が働かずに抵抗器が焼損する場合があります。このようなケースでは、抵抗器が赤熱や発火を起こさないようにヒューズ抵抗器FRNの使用をお勧めします。
2.ソース電流制限抵抗
MOSFETのソース抵抗は、一次側の電流を制限し、電流検出抵抗器として使用されます。MOSFETの故障により大電流が流れ、抵抗器が発煙・発火する可能性があります。このようなケースでは、抵抗器が赤熱や発火を起こさないようにヒューズ抵抗器FRN・FWFの使用をお勧めします。
図12.電源回路
3.突入電流防止抵抗器
電源回路では、電源投入時に平滑コンデンサを充電するため、大きな電流が流れ機器の誤動作を引き起こす可能性があります。そこで、電源投入時の突入電流防 止のために電流制限抵抗器を使用します。この抵抗器には、安全のためヒューズ機能を持った抵抗器が使用されることがあります。UL、CSA規格取得した 温度ヒューズ内蔵セメント抵抗器 RWT05Aシリーズをお勧めします。
図13.電源回路
4.おもちゃ回路の抵抗器
子供が使うおもちゃは、安全が最優先です。
おもちゃは、扱われることが多く、作動中に衝撃などにより不具合が発生し大きな電流が流れることが有ります。大電流による発熱事故を防ぐためにヒューズ抵抗器 CFDシリーズのご使用をお勧めします。
図14.おもちゃの回路
Ⅵ.ヒューズ機能を有した抵抗器の紹介
UL、CSA規格取得品もラインナップ。電子回路の安全性を確保に最適なヒューズ抵抗器を紹介します。
[1]リード線型ヒューズ抵抗器
ヒューズ固定抵抗器 FRNシリーズ
https://www.akaneohm.com/products-data/frn/
[2] リード線型電流制限抵抗器
電流制限抵抗器 CFDシリーズ
https://www.akaneohm.com/products-data/cfd/
[3] UL、CSA規格取得で電源回路(一次、二次)に最適
温度ヒューズ内蔵セメント抵抗器 RWT05Aシリーズ
https://www.akaneohm.com/products-data/rwt05a/
[4]温度ヒューズ内蔵抵抗
温度ヒューズ内蔵セメント抵抗器 RWTシリーズ
https://www.akaneohm.com/products-data/rwt/
[5] セメント型ヒューズ抵抗器
セメント型巻線ヒューズ抵抗器 FWFシリーズ
https://www.akaneohm.com/products-data/fwf/
*ヒューズ抵抗器はこちら https://www.akaneohm.com/prd_cat_use/fuse/
注意:本資料は予告なしに変更する場合がございます。
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