抵抗器の故障モードには以下のようなものがあります。
□ 断線(Open)
□ 短絡(Short)
□ 抵抗値不安定
抵抗器の種類により発生しやすいモード、メカニズムは異なりますが、主な内容は表1の通りです。
表1 故障モードとメカニズム・要因
故障モード | メカニズム | 使用上の要因 |
断線・抵抗値高化 | 抵抗体焼損 | 過負荷、サージ、パルス |
抵抗体変質 | 高温高湿 | |
抵抗体腐食 | 腐食性ガス・物質 | |
抵抗体クラック | 過負荷・外的応力 | |
電極剥離 | 外的応力 | |
半田くわれ | 半田条件 | |
短絡・抵抗値低下 | 抵抗体変質 | 過負荷 |
抵抗値不安定 | 抵抗体クラック | 外的応力 |
抵抗体変質 | 高温高湿 | |
抵抗体劣化 | 過負荷、サージ、パルス |
市場では断線または抵抗値高化が多くを占めます。
短絡は極めてまれで、過負荷要因により抵抗値が若干低下することは時々あります。
(1)過負荷による断線
基板上の抵抗器以外の部品が故障した場合や不慮の状態で抵抗器に過負荷がかかってしまう
場合があります。
抵抗器は発熱部品ですので、定格電力(電圧)をオーバーすると大きな事故につながる危険が
ありますので特に過負荷に対しては注意する必要があります。
下記は負荷別の一般的な症状です。
定格電圧の3倍以下 | 瞬時に破壊・断線はしませんが、若干抵抗値が変化し、基板などが焦げることがある。 |
定格電圧の3~5倍 | 発煙、発火が見られ抵抗値も大きく変化する。 |
定格電圧の5倍以上 | 数秒~数分で発煙、発火する。抵抗器本体が赤熱し、数分以内に破壊、断線に至る。 |
過負荷破壊事例
外装の焦げ 外装燃焼後
抵抗体の焼損、クラック
各種抵抗器に過負荷を印加した時の抵抗値変化参考例
試験サンプル:各1/4W 120Ω 試験条件:定格電圧×4倍連続印加
変化の大小、時間の長短はありますが、どの種類の抵抗も上記の酸金抵抗に代表
されるように一旦抵抗値が下がり、その後上昇するケースが多く見られます。
(上記グラフでは分かりにくくなっています。)
酸金抵抗が比較的大きな低下率を示すのは、抵抗体である酸化金属が過負荷の熱と化学反応
で還元され、純金属により近い状態になり、一時的に導電率が上がるためと考えられます。
過負荷状態が継続することで更に抵抗体が変質、焼損し抵抗値は上昇していきます。
過負荷事故防止の対策例
・ヒューズ機能を持った抵抗器を使う → 製品一覧 ・使用条件を見直す → 関連コラム「サージ・パルス電圧について」 |
(2)高温高湿や腐食性環境による断線
高温高湿や腐食性環境は電子部品を劣化、故障させる要因です。
発生事例の多いものに以下のようなものがあります。
特にカーボン抵抗の電蝕は高温高湿環境だけでなく、イオン性不純物の介在によっておきますが、
使用環境の中で真の原因(発生源)を特定できないケースもあり、対応が難しい現象です。
→関連コラム「電蝕のメカニズムと、電蝕を考慮した設計」
高温高湿、腐食環境への対策例
・使用環境に適した製品を使う ・設計における配慮 →参照コラム「電蝕のメカニズムと、電蝕を考慮した設計」 |
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