モバイル製品のバッテリーを長持ちさせる設計を考えてるんだけど
何かヒントない?
大電流タイプのジャンパー抵抗器(HCJシリーズ)で無駄な電力消費を抑えて改善できました。
■解説 - ジャンパーやゼロオーム抵抗器の抵抗はゼロではない
設計上の理由でジャンパー抵抗器やゼロオーム抵抗器と呼ばれるジャンパー素子を使用する
場合があります。ジャンパー素子は基板パターンの短絡や、将来部品を追加するかもしれない
箇所の短絡などに使用される目的から、抵抗値はゼロであることが理想ですが、実際には僅か
に抵抗値を持ちます。電流が流れることによる抵抗での電力消費は、ジャンパー素子において
は非常に無駄なものでした。本事例では大電流タイプジャンパー抵抗器の極めて低い内部抵抗
に着目して無駄な電力消費を抑え課題を解決しました。
■改善のヒントはジャンパー素子の抵抗値と最大許容電流
ジャンパー抵抗器の抵抗値保証と使用できる最大許容電流はシリーズ毎に異なっており、用途
や目的に応じてこれらを使い分けることになりますが、今回は一般タイプのジャンパー抵抗器
を大電流タイプ(HCJ)に変更しました。HCJは内部抵抗が0.5mΩと極めて低く、シリーズ
最大許容電流が63.2Aと大きいのが特長です。動作時電流が1~2A程度の一般電子機器におい
て電流値だけを考えた場合、63.2Aもの大電流ジャンパーは必要ないと考えるのが普通ですが、
内部抵抗に着目することでノートPCの省エネ設計を実現することができました。
タイプ | 製品名 | シリーズ名 | 抵抗値保証(Max.) | 最大許容電流 |
リード線形 | ゼロオーム抵抗器 | RD | 10mΩ | 1-2A |
リード線形 | ジャンパー線 | J | 5mΩ | 10A |
チップ | 厚膜チップ抵抗器(ジャンパー) | CR | 50mΩ | 0.5-2A |
チップ | 大電流ジャンパーチップ抵抗器 | HCJ | 0.5mΩ (0402のみ3mΩ) |
6.5-63.2A |
抵抗R、電流Iの時の消費電力はI×I×R (注1) で計算できますので、仮に50mΩのジャンパー
抵抗器に2Aの電流が流れると0.2Wの電力を消費することになります。
理想的な素子であれば消費電力はゼロですので、これは無駄な電力消費と言えます。
下のグラフは、大電流タイプ(0.5mΩ)と一般素子(50mΩ)における電流毎の消費電力で、
電流が大きいほどその差は顕著になります。
この”無駄な”電力消費は特に、モバイル端末や携帯電話、ノートPCなどにおいてユーザーが気に
するバッテリー持ちに少なからず影響を与えてしまうことになります。
■課題解決例 -ノートPCのバッテリー持ち改善
例としてノートPCの消費電力を20W(10V 2A)とし、ジャンパー抵抗器が3個使用されていると
すると、一般タイプでは0.2W×5=0.6Wが消費されます。これが大電流タイプ(HCJ)を採用
したことで0.002W×3=0.006Wとなり、その差は0.594W。理論上、20Wに対し約3%の無駄な
電力消費をカットし、バッテリー持ちを改善することができました。
■まとめ
- ジャンパー素子の重要な電気特性は最大許容電流と内部抵抗値。
- 内部抵抗に着目することで無駄な電力消費を低減し、省エネ設計を実現!
注1)電力=電圧(V)×電流(I)
オームの法則よりV=I×Rなのでこれを上式に代入して”電力=I×I×R”
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